なぜそんなことをするかというと、クリーニングは店によって仕上

なぜそんなことをするかというと、クリーニングは店によって仕上がりが違うので、その客がいつも使っているクリーニング屋の癖をのみこんでおかないと、シャツ屋はいい仕事ができないから:::、というようなことも知っていた。ひとつ持っていると便利だ”上回し、品のよいアクセサリーとしてレディには欠かせないものだ、とか、紅茶を飲む時、匙は器に触れないように使うベしなんてことや、ライターはやはりダンヒルが一番、ただし、腹を立ててウエッジウドのペンダントはブローチにもなるから、決闘ζ’-』るのだった。ところがそういう知識も、どこかのチンピラの体に鉛の玉をぶちこんだ話より、彼にとってはランクが下だったらしい。あまりひけらかす風でもないのだ。これは不思議だった。あんなになんでも自慢する男が、豊富で質のよい知識はひけらかそうとしないのは、どういうことなんだろう。彼にとって自慢するしないの基準は何なんだろう、と首をかしげたものだった。それが、最近になってようやく分かってきた。彼は、自分が主役でカッコよく活躍した話以外はすべてどうでもいいのだった。後に、結婚してから二人で経営していた青山ロブロイというライブハウス時代の話をしている時なども、私にとっては面白かった客のエピソードを「ああ、そんなこともあったな」と軽く流してしまう。すべて、自分が主役でなきゃつまんないお山の大将君は、他人のエピソードなど、特に語るほど価値のあるものじゃないのだ。なんと幸せな性格。彼のこんな性格をもっと早く認識していればよかった、と思う。そうすればもっと理解も深まっていただろうに。は、三年たってから、ということになる。しかし、このお坊ちゃんは万事がマイペースの男であった。仲よくなってデトを重ねるようになると、たちまち「女房とは離婚だあ」と騒ぎ出し、勝手に私との結婚を決め「君がお琴を弾ける部屋を作ったよ」などと言いだした。そして、あろうことかホノルルで会った私のポイフレンドを、ワイキキの浜へ決闘だと言って呼び出したのである。その時の様子は、彼があとで説明したところによるとこうであった。「おれ、君と結婚するつもりだからさあ、あいつ、砂浜に呼びだしてやった。絶対どっちかが死かっぬまでやるんだと思ってきあ、シャベル担いで行ったんだ。砂浜に穴掘って、殺されたほうがここに埋められるんだ、って言ってやったんだ。そしたら、あいつピピて、そんな野蛮なことはひきょう趣味に合わない、なんて言いやがんの。笑っちゃいますよね。