あんな卑怯なやっと結婚しちゃダメだぞ」なんて奴だ、人に黙って

あんな卑怯なやっと結婚しちゃダメだぞ」なんて奴だ、人に黙って。うんざりした私は、とにかく「んちゃ」と言って別れることにした。いい男だけど、目立つことだけが人生、目立っためにはなんでもする、というんでは、うるさくてしょうがないではないか。家庭は舞台じゃないのだ。第五章孤独なるか怪物。||島県雄・小佐野賢治を取り巻く女と男たち何・’先程から、ずっとラウンジの白梅紅梅の額の下、西陣織の椅子に向かい合わせで秘書と話をしおきのけん巴ているのは、日本航空の大株主・小佐野賢治である。小佐野は、戦後実業界の怪物といわれていた。小学校を出ただけでのしあがってきた立志伝中らヲんの人物で、戦後のドサクサをうまく利用して閣で儲け、諌腕をふるって億万長者になった、という噂の持ち主だ。大柄の、熊を思わせるようなのっそりした雰囲気で、頭は、下のほうにグルリと毛が残っているだけで、上部にはほとんどない。私は彼の燃とは麻雀仲間だったので、お茶を運んだついでにそのことを言ってみると、彼は「ほう」と言いながら、あらためて私の顔を見直した。bpLそして二言三言、話をした後で、急に思いついたように、「君、貯金はあるかね」と三言い出した。突然の質問に私はウロタえ、つい本当のことを言ってしまった。ご銭もありません」呆れたように、横に突っ立っている私の顔を見上げる。「珍しいね。国際線のスチュワーデスなら一万くらいの貯金はあるだろうに」「そうですね。友だちなんかは、みんなしっかり貯金しているようです。でも私は全部使ってしまうんです」それを聞いて、彼は「まあ、そこにすわりなきい」と言って前の席を指差した。「いったい何に使ってしまうんだね。ぜひ聞かせてもらいたいね」そこで私は腰を下ろし、若い娘の計画性のない浪費ぶりを話して聞かせたのである。「面白いね、君は。どうだ、ホノルルの私のホテルで一緒に昼めしでも食わんか?」私の話のどこに興味を持ったのか知らないが、そういう小佐野に、私は「ええ」と返事した。大物財界人の私生活を観察するいい機会である。に耳そのころ彼は、日本人で初めて海外の資産を購入した実業家として、新聞を賑わせていた。ついひと月前の七月、ワイキキにあるプリンセス・カイユラニという、海に面した一室ほどのホテルを、八万ドル(一ドル三六円の頃で、二八億八OOO万円〉で買った、というのである。その前の年、彼は「京や」という、これもワイキキにある日本食レストランを手に入れていた。