「みその」というのは、鉄板の上で焼くステーキを食べさせている

「みその」というのは、鉄板の上で焼くステーキを食べさせている店だ。月の終わりに来月のスケジュール表を提出させ、私がオフの日は必ず電話してくるので、七時半の電話は狂ったことがない。かくして、私の夜の予定は全部彼に押さえられてしまうのである。しーう私が東京にいる聞は、夜は必ず誘ってくる彼を見て、いったいほかのつきあいはどうなっているんだろうと、不思議に思わずにはいられなかった。それから彼の話題だが、これがひとつのことから離れない。すなわち彼は徹底して金の話しかしないのである。どこの土地がいくらしたとか、値上がりしたとか、何がいくらで売り出されているとか:::。いる。つまりデト中も仕事から離れようとしないのである。また、常に秘書が一緒だったが、私といる聞にも、絶えずこの秘書に仕事の指示を与え続けておもむこれは、どこにいても同じだった。そのうえ、呼び出された場所へ赴くと、たいてい数人の男たちが一緒だった。わらない陣笠じんがさ代議士連中。を頬ばった小佐野は、いつも上機嫌だった。欠かさず顔を見せていたのは、ある観光会社の社長。それと毎度顔ぶれは変わるが、態度は変彼らは、まるで出入りの御用商人のように、小佐野に頭を下げていて、彼らを相手にステーキ「沖縄の基地では、毎日ミルクがどれぐらい消費されるか知ってるか?当てたら一万円やろそれから銀座のパへ飲みに行くのだが、通りを歩いている聞も、素早くピルの空き部屋などを見つけ、「おい、あんないい場所が売りに出てるよ。あそこだったらきっと権利金は高いぞ」と言ってみたり、そうかと思うと、突然私の耳に、「私にはね、金なんて石ころみたいなものなんだよ。ほんとは金なんてどうでもいいんだ」などと噴ささやく。とにかく、話は金から絶対に離れない。これだけカネ、カネ、カネなら、態度も相当卑いやしいだろうと思うと、これがそんなことはない。立居振舞たちいふるまいはきちんとしている。顔から受ける印象がワイルドなので、動作も荒っぽいんじゃないかと思っていた私に、これは意外に思えた。だが、女といても金の話しかできない彼は、女の扱い方は不器用だった。女は好きだが女遊びは下手、という印象を持った。この年代の特徴を、彼もまた見事に備えていたわけである。毎月スケジュールを出させる凡帳面な性格のことは書いたが、彼はホノルルへ行く時、このスケジュールに合わせて出張するのだった。その頃、ホノルルにホテルチェーンを作ろうとしていた小佐野は、月に三、四度は東京ホノルル聞を往復していた。